境界くらいは、はっきりしておこう
この敷地の入手を決断する際、近所の空き地に荷造り用のビニールテープを貼って敷地と道路の関係を写しとり、何度も車の出入りを試みた。その結果、現状の間口では相当厳しいことは覚悟していたので、区役所で間口が四メートルと聞かされた時は、嬉しさが込み上げてきた。後日、地主の中田さんにこのことを確認すると、四メートル間口をいともあっさり認めてくれた。「ツキがある」そう思わずにはいられない。ついでに敷地の境界を地主といっしょに確認することになった。
通常、土地の売買契約をする時、買主は、これまでの所有者に対し、隣地との境界を明確にしてもらうよう請求することが出来る。仮に境界線の交点に標識が有ったとしても、隣の人との立会いを仲介者に頼んで実施できればそれがベスト。測量図を新たに作るのであれば、境界石や塀の所有を明確にして、隣地の所有者と互いに署名捺印を取り交わしておけば後々のトラブルを回避出来る。
私の場合、案の定、東南の角の境界石が見当たらなかった。周囲のブロック塀の様子から想定は出来たので、隣地の安藤さんに立会いを依頼してポイントを決めた。地主の中田さんがその場に居たこともあり、円満にことが運んだ。
後日、地主が知り合いの測量士に依頼して、新たにその東南の角に境界石を入れることになった。すると驚くべきことが発覚した。原則として土地の境界は、点と点を結んだ直線となる。北側の境界石と新しく設けた境界石を結ぶとその線上にある筈のブロック塀が曲がって、私の方の敷地が広くなっていたのだ。よく見ると、塀が湾曲している位置に巨大な切り株がある。どうやらこの大木が、成長に合わせて塀を相手側に押しやったらしい。昔からこの地に住んでいる地主の中田さんも驚いていた。自分の敷地なら、得した気分になりそうだが、悲しいかなここは借地、冷静な目でことの成り行きを見守ることにした。