都心では可哀想な木造建築たち
また、ごく一般的な準防火地域では、まだ木造建築が可能だ。木は本来、湿気と火災に配慮すれば、充分な耐久性はあるものなのだ。そして、木造建築の理想は、深い軒の出た一階建(平屋)に軍配があがる。
私の夢は、いつの日か、小さな池の自慢の鯉にエサを撒きながら、建ペイ率十%ぐらいの庵という名にふさわしい平屋の木造住宅で余生を過ごすこと。青春時代から悩み続けた薄毛もさっぱり剃り落し、作務衣を着用して晴耕雨読。もちろん主食は江戸前鮨と決まっている。
「頑張るぞ! ああ、日本人に生まれてよかったと思えるその日まで」
都心の狭い敷地で、この本来あるべき姿を実現できない木造建築は、多大なハンデを背負っている。それでも一戸建ての住宅の場合、木造が多いのはどうしてか。言ってしまえば、ただコストの安さのみで木造が採用され続けているようにも見てとれる。「木造イコール安さ」という図式ができあがっているようだ。