仕事は段取り次第
晩秋の大安の日、曇りがちだが雨の心配は無さそうだった。今日は、いよいよ建物が地上に現れる建て方の初日である。規模が少し大きいので、構造体を組み終わるのに二日はかかる。そこで「上棟式」は翌日と決めた。事務所兼自宅に居ても落ち着かない。とにかく現場に行ってみることにした。既に作業は始まっている。職人の朝は早いが、早朝から物音を立てると近所迷惑なので、建築工事は概ね午前八時から始まる。いつもの事だが私は少々遅れて現場に着いた(芸術家は総じて朝が弱いのです)。
コンクリートの基礎の上に敷かれたヒバの土台の上に、前日に搬入された4トントラック一台分の材木が横たわっている。アパートも併設しているため、一般の住宅の三倍近い木材が使用される予定だが、敷地に余裕が無く道路も狭いので、これ以上は入れられない。第二便の材木は午後に到着することになっていた。
クレーン車の脇で、作業を見守っているわずかな時間に、一階の柱が次々と建てられていく。下準備は大変だが、この段階までくるとさすがにSE構法の組み立ては早い。まるでプラモデルを組み立てるかのように、軽快に作業が進んでいく。この構法を初めて経験する土屋棟梁は、早くも要領をつかんで、建て方の作業を楽しんでいるようにも見える。土屋ジュニア(跡継ぎの長男)の動きも軽快だった。
予定通り、午後には二台目のトラックが到着する。材料が直接荷台からクレーンで吊り上げられ、所定の位置にセットされていく。このペースでいけば一日ですべて組み上げられるのではないかと思われた。実際その後も順調に作業は進み、日が翳る頃には搬入された材料のほとんどを使いきり、二階までの骨組みが終了した。明日、残りの三階部分と屋根の組立が終われば上棟だ。