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外装材を内部に使うという発想

そんな訳で、この娯楽室の設計には力が入った。頼まれもしないのに、暖炉型のガスストーブもつけておいた。そして、この暖炉に似合う内装という視点から、普段は外装材として使用経験があったシッタという左官材を塗ってみた。これが予想に反して、なかなか評判が良いではないか。色彩もオレンジ色に近く、暖か味が出て、しかも斬新だった。夕方には西日を浴びて黄金色に輝き、夜は間接照明でリゾートホテルの空間に変身するのだ。この時、シッタは外装材より内装の方が効果的だと確信をもった。

ところで、この暖炉式ストーブ、後で聞いた話だが、
「病院が丸焼けになるのは困る」
という理由で、クリスマスイブ以外はまったく利用されていないらしい。これは大変、失礼いたしやした。

それからというもの、私の設計した建物の中に、このシッタが度々登場し始めた。白、オレンジ、グリーンと色彩を変えているので、自分では多用している意識は無いが、そういえば最近になって、この材料メーカーから、きまってお歳暮が届くようになっていた。

「よし、この際、このシッタで勝負だ」
問題はコスト。使うとなると、その数量は半端ではない。早速、価格の交渉に入った。この材料、イタリアからの輸入品のため、決して安くはない。値段では左官材としては最高峰に位置している。このままでは当然予算オーバー必至となる。一方、左官の手間も馬鹿に出来ない。天井も高いし、階段は吹き抜けている。時間差によっては、塗り継ぐ境目にケロイド状の継ぎ目が出来る。人手をかけて一気にやるしかない。馴染みの左官職人、緑川さんに協力を仰いだ。

色はもちろんあのオレンジに。これは義兄の娯楽室と同じだ。あの時の感動にも似た体験を思い出していた。

「物を作るのなら、まず自分が感動するものでなくてはダメだ」
いつしかこれが私の信条になっている。

シッタ以外の材料としては、居間の一部にリブ状になったアルミパネルを張って、現在の流行である無機質でシャープな感じを付加してみた。所々に、マッカーサーエボニー(アフリカ黒檀)の練り付け板を貼って空間を引き締める。もちろん、不燃加工したものだ。全体的にはオレンジ色の壁面が一階の玄関から三階の居間まで延々と続くことになったが、天井を白に統一したため、思ったより重苦しさは感じない。

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