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掃除が楽なコルクタイルに軍配

リビング、ダイニングの床材として、最後の候補には畳とフローリングが残っていたが、ここだけ材料を変えることにやや抵抗も感じ始めていた。機能性ばかりに気をとられ、いくつもの材料を床に使用するのは、かえって野暮な感じもする。

「全部コルクタイルという安易さも、考えによっては逆に潔よいではないか」
 そんな気がしていた時である。

「コルクって掃除が楽そう。それがイイ。それでイイ」
 妻の同意でついに最終決定が下された。家づくりの主体はやはり主婦なのだ。「あっ、そう。じゃあそれでいいか」

 こんな経緯で我が家の主要な床材は厚さ5ミリのコルクタイルに決まった。なぜメーカーが推奨する厚さ7ミリではないのか。理由は簡単。予算が許さなかったからだ。そのかわり、表面仕上げは、ワックス焼きこみより、少し高価な強化ウレタン仕上げにした。前者の方がマットな風合はよいのだが、表面に蝋が塗られているため滑り易いのが欠点。これに比べ、後者は、表面にツヤがありすぎる感は否めないが、断然滑り難い。ツヤは徐々に落ちていくだろう。

「先生、もう変更はできませんよ。床にできるわずかな段差は、年を取った時危険ですから」
 清水棟梁に念を押され、腹が決まった。

 時間が前後するが、その後、コルクタイルの床で生活して実感したことを先に報告しておきたい。まず、予想どおりに
「掃除は楽になった」
と妻でなく、婆ちゃん(私の母親)は言っている。コルクの表情にムラがあるせいか汚れも目立ちにくい。表面が平滑なのでスッと拭けて清潔感もある。柔らかいので足さわりもよく、冬暖かく感じ、逆に夏はひんやりして、特に素足が心地よい。

 難点と言えば、すぐに日に焼けて、色が薄くなっていくことである。直射日光に当たる所は、特に顕著のようだ。「クリ色がミカン色に、さらに梨色なっていく」と説明したら分かり易いだろうか。見本帳のサンプルで見る限り、一般的に、濃い色の方が高級感があり、単価も高い。しかし、僅かな間にその色が飛んでしまうのはいただけない。

 我が家の場合、ほんの数年で、なんとも情けない色になってきている。きっとこ
のままでは、あと数年でワインの栓の色に戻ってしまうだろう。聞くに、このコルクタイルはポルトガル産だという。市場に出て何十年も経つのに着色技術は一向に進歩していないようだ。これもお国柄か。最大手の千代田コルクあたりで技術革新をして、是非この弱点を克服してもらいたいものだ。矢下社長、よろしく。

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