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お湯があふれる贅沢感がいいのだ

「これでもか」と改良が続く日本で、お風呂について言えば、追い炊き機能が常識になってきている。浴槽に穴を開け、給湯器とパイプで結んで、冷めたお湯を再加熱して戻す便利な仕組みだ。こんな装置が普及するのは、きっと日本だけだろうとマジで思うが、最近では、必ずと言ってよいほど施主からの要望事項に書き添えてある。

ところが我が自邸では、この私の頑固なまでの執着で、これを拒否したのだった。理由は単純。その昔、生まれ育った実家で、この循環パイプから黒いワカメのような代物がよく排出された記憶があるからだ。それにいくら家族であっても、何人もが同じお湯に浸かるわけで、その汚れたお湯を循環してまで使用するというのは、どうも納得がいかない。
「お湯は足そうよ。日本では水道代そんなに高くないし、コンセプトはホテルのような家づくりだから」

なんとしても妻を説得しなければならない。
「温泉だって、掛け流しが一番。熱いお湯を足せばいい。追い炊きだってガスを燃やすんだよ」
「そこまで言うなら、好きにしたら。でも、水道代、余分に働いて頂戴ね」

しかし、今にして思えば、最近の追い炊き付き給湯器は性能も向上し、当然ワカメ対策もしてあるのだろうから、そんなにムキになって拒否する必要も無かった。

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