サッシの色にこだわる
屋根工事が終わると、大工達は、外壁を囲む構造用合板の取り付けに入った。SE構法では、在来工法のように、筋違い(壁の中の斜めの支え棒)がない代わりに、外壁にベニヤ板を張り巡らせて強度を増している。今日も薄曇りの下、冷たい風が容赦なく吹き抜けていく。冬の到来がすぐそこに迫っていた。外周りの壁ができてしまえば、北風小僧から少しは身を守れる。一日も早く外壁を囲ってしまいたい。
大工6人で手分けして施工した結果、4日目にはほぼ形がついた。次は一刻も早く窓を取り付けて、完全に外からの風雨を遮断してしまいたい。
「先生、サッシはいつ届きますかねぇ」
アルミサッシの納品が遅れていた。何を隠そう、これまた私のせいだった。清水棟梁に謝らねばならない。
今から一か月前の基礎工事の頃、サッシの発注を目前に、私は色決めに悩んでいた。概ね建築家が関与している住宅では、サッシの色はシルバー色と相場が決まっている。
「やっぱり、クセの無いシルバーがいいよな」
「どうでもいいけど、カッコよくしてよね」
もう一人の施主の了解を得て、さっそくシルバー色を指定したところ、サッシ屋からその日のうちに返事がきた。
「先生、既製品の場合、シルバーはどのメーカーにもありませんよ」
血相を変えた私は文句を垂れた。
「最近の建築雑誌を見てよ。ちゃんとあるじゃないの」
反論したが、すぐに反論された。
「じゃあ特注にしますか。高いですよ。いいんですか?」
ハハンなるほど。活躍中の先生方は、このあたりに余分なコストを費やして、見栄えをよくしているのか。世の中の実態がまた一つ見えてきた。