なんと外から丸見えの我が家
我が家の南側の隣地は、土地を購入した時点では、この辺りでは珍しい鬱蒼とした雑木林の中に、汚い木賃アパートが数軒建っていた。そこに突然十一階建ての立派な賃貸マンションが建設されることになって仰天したが、偶然にもこの建築を請け負ったゼネコンの所長と人脈がつながって、お互いの工事が上手く協調できた経緯は以前お話した。そんなこともあって、このマンションの工事については、私も寛容な態度で通したが、悔しいかな世の中、善意がすべて報われるとは限らない。
このマンションと私の自邸はほぼ同時に完成した。日影規制の関係で、以前は目の前に迫っていた木賃アパートに代わって、新築された建物は数十メートルも離れてくれたのは万々歳だったが、マンションの入居が始まって気づいた。何とマンションの北側にある窓が全て透明ガラスなのである。つまり我が家の南側にあるどの部屋もマンションの部屋から丸見えになっているではないか。
「アチャー、大失敗」
社会通念上、相手が新築の際、北側の窓は型ガラスと呼ばれる不透明なものにしてもらう権利は認められるようだ。ゼネコンがいた時にクレームを付ければ何とかなったものを、引き上げてからでは「後の祭り」だった。そこで仕方なく自分で防衛策を考えることにした。
このマンションに向いた四か所の窓について、まず、食堂のアコーデオン式全開口サッシは、その外のバルコニーの手摺壁を目線まで高く立ち上げたので、視線が遮られてこのままでよかった。カーテンも不要だ。次に、居間のサッシには障子を取り付けたので、ここも完璧に視線を遮ることができている。残るは、婆ちゃんの部屋と子供部屋の窓が無防備になっていた。
両方の部屋共、カーテンはあるものの、開けたら相手からは丸見えとなり、実に落ち着かない。この窓の外に目隠しが必要となった。そこで思いついたのが、スダレだった。京都の町屋の二階の窓に架かっているあの竹製の簾である。はて、どこで調達したらよいかと思いを巡らせる。あるある。国道二十一号線、つまり甲州街道を調布方面に向かって右側に古びた竹細工の店があった。