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東日本大震災を経験して

早いもので、あれから十五年が経過した。この間の大きな出来事といえば、東日本大震災に直面したこと。私は当日、仕事で建築現場にいたので、自邸がどの程度揺れたのかは体験できなかったが、居合わせた二人の子供の言によれば、書棚から本が滑り落ちたくらいで、パニックにはならなかったらしい。周囲を見渡しても、幸い目視できる範囲ではダメージは受けていなかった。
しかし、さすがに十五年を経過し、何となく全体的に薄汚れてきた感があるのは否めない。当然といえば当然。この間、日頃の煩雑さにかまけて、全体としては外壁の清掃はおろか、一度もメンテナンスをしていない。
「それにしては、きれいですね」
訪問者の誰もがお世辞を残してくれるが、自分でも予想以上に痛みが少ないことに一応の満足感がある。

特に内装は、もともと外装材のシッタという大理石の粉を壁に塗ったことで、まったくと言ってよいほど変化は見られない。職人の下地処理が上手かった証拠だろうか、天井のペンキ塗りの部分で、クラック(ひび割れ)がどこにも発見されていないのも不思議なくらいだ。
個室の天井と壁は、コストの面も考慮して、最初からクロス貼りとなっている。ここは家具の配置移動でぶつけたり、テープや画びょうの跡が見えたりで、それなりに生活感が認められるが、さりとて「貼り替えよう」との言葉は、今のところ家族の誰からも聞かれない。
いや忘れていたが、娘のタカコが数年前の反抗期に何度か文句を言ったことはある。
「いい加減に替えてよ。目がチカチカしてウザイ。誰の趣味?」
実は当時二歳だった彼女のために、夜に照明を消すと天井が星座のように光る蓄光クロスなるものを親心で選んでいた。最初は喜んで、何度もスイッチをいじっていたのに、中学に入学する頃には、他人のような目で睨まれるのだから、父親は実に割に合わない存在だと思う。

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