植物に囲まれて暮らしたい
私の自邸には、ネコの額ほどの庭がある。建物の三階が住まいなので、地面から長い鉄骨の柱を立てて三階にバルコニーを作り、そこを庭にしている。外からの視線を遮るため、少し手摺の壁を高くしたので、ちょっとした中庭の雰囲気がある。自邸を新築して間もない頃、ここを観葉植物で埋め尽くしてほくそ笑んでいたら、最初の夏に半分枯れて、その年の冬に全滅してしまった。
観葉植物の多くは、宮崎県あたりで育ち、春先に都内の洒落た花屋やホームセンターに並ぶ。亜熱帯が原産の上に温室育ちなので、日本の、しかも野外の四季の変化には耐えられないと分かり、翌年には直射日光を避け、部屋の中の窓際に置いたらどれも年を越した。
「そうか、植物も人間と同じ生き物だったのだ。」
過酷な気象条件の中に放り出してしまい、「実に可哀そうなことをしたものだ。」と反省した。それからは、2年毎に鉢の土を替え、水やりも欠かさずにいると、家族の一員のように思えてきた。そして彼らもしっかり自分の居場所を得たようだ。
ところで、何も無くなった外の庭が殺風景になったので、こちらは野山で馴染みのある梅やモミジの苗木を鉢に植えて眺めることにした。これらは観葉植物と比べて、やや華やかさに欠けるが、季節によってその姿を変えていくので、秋の深まりをモミジの葉の色で知り、京都に思いを馳せることもある。
庭の葉っぱが無くなって、うっすら雪化粧の早春の頃に、枝垂れ梅の白い小さな花が咲くと、この甘い香りに誘われて時々メジロが立ち寄ってくれる。
無理して作ってよかったと思う今日この頃である。