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竣工パーティ

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先日、お引き渡しした新築の住宅で、建て主主催の竣工パーティに招待された。

設計の契約を頂いてから、約一年が経過している。この間、建て主は不安と期待が入り混じった複雑な気持ちで毎日を過ごされていただろうと想像がつく。新しく買った土地の前を、ジョギングの途中に何度となく通り過ぎて、着工を今か今かと待ち望み、工事が始まると週末ごとに工事現場を訪れ一喜一憂されている旦那さん達の姿は、失礼ながら実に微笑ましい。

設計監理する側にとってみれば、どの建物もその進行状態は概ね同じで、これまでの経験から、ほぼ全体像も把握できている。しかし、初めてのお施主さん達はそうはいかない。図面上で何度も説明したはずでも、なかなか設計者の頭の中と、お施主さんの理解とが一致することは難しいようだ。

「ああ、こうなるんですか。」と、現場でやっと納得される施主が実に多いことから、工事中も、なるべく現地へ足を運んでもらう。全て任せてもらい、完成時に驚かす手法もあるが、住宅は毎日の日常生活の器。なるべく施主の個性や思い入れを大切にしたい。実際に施工中のその場に立ってもらい、その後の仕上げなどを一緒に検討する機会を多く作りたいと思う。

最近では分業が進み、各々の職人たちが自分の手がけた住宅の完成した姿をじっくり見る機会はほとんどない。実際、興味はあっても、職人たちにじっくり竣工現場を眺める余裕はない。今回は、若い大工の棟梁のご家族(奥さんと子供達)を招待することになった。毎朝、早く出かけていく「パパ」の仕事場と成果を見てもらう目論みである。

お隣りから、「芸能人のお宅みたい。」とお世辞を言われたことが、事の他嬉しかったご主人。芸能人ではないにしても、新しい住まいで子供たちの成長を見守りながら、毎日の生活を「ちょっとオシャレに」楽しく演じてほしい。

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