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恵那の錆び石

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施主の依頼で、久々に和風の庭づくりに挑戦した。挑戦といっても、造園の知識が豊富なわけではないので、「らしくない和風庭園にしたい」の一念、いわゆる昔から続く伝統的な庭ではない新しい試みへの挑戦だった。

思案の末、樹木の脇役に庭石は不可欠という結論で、岐阜県東濃地方の恵那錆び石を置くことにした。一見、普通の御影石だが、微妙に鉄分により錆色が混じる。これが何となく新しい侘び錆びの世界を醸し出す。

以前に、柏崎のリゾートホテルで多用して、周囲で話題になったことがある。この石の存在を教えてくれたのが、岐阜県在住の黒田さん。当時、国内最大手の関ヶ原石材(株)で営業部長をされていた。

どうせなら、石切り場で適当な自然石を探したい。翌日、二十数年ぶりに岐阜県中津川市を訪れた。当時の活気はないが、山間の工場で、大きな丸鋸が回転している。姿かたちの良い部分がすでに出荷され、端材がゴミ(と言っては失礼か)のごとく道の両側に山と積まれている。この中から、「面白いモノ」を探す作業ほど面白い時間はない。少なくともこの私にとっては。

朝9時から夕暮れまで歩き続け、やっとふたつの候補を見つけた。予定を伸ばしてもう一泊。明日は、もう二つ探さねばならないが、こんな私の馬鹿げた行動を、施主は知る由もない。

岐路に中津川の駅前あたりを散策。ほとんど人が歩いていない。街角で風情のある建物を見つけた。栗の和菓子で有名な「すや」の本店らしい。確か「木工の話」を読んだ時に、栗の木のショーケースは木工職人の早川さんの作品と記憶する。

妻の大好物の栗きんとんを2箱買った。娘と取り合いにならないために。

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