伊賀上野の「だんじり」
小生、仕事の切れ間を見つけると、無性にどこかに行きたくなり、思い立ったように地方の街並みを目指す。特に計画性は無いので「ダーツの旅」に似ている。大学の研究室の先輩が、風を入れるために、時々、故郷の空き家に帰省していると聞いた。木枯らしの中、「一度おいでよ」の言葉に誘われて新幹線に乗った。
名古屋から関西本線で伊賀上野に向かう。約二時間の車窓だ。なぜ上野がつくのか知らないが、あの忍者で有名な伊賀であることに間違いない。立派なお堀端を散策し、城下町の名残を忍ばせる路地裏を巡る。シャッター通りとまではいかないが、こうした昔栄えたであろう地方都市は、どこも時代の流れの中に取り残された一抹の淋しさが漂っている。
だが、今週は少し違うらしい。ちょうど上野天神祭の最中で、街の中心部では、「だんじり」と呼ばれる山車(だし)が随所に鎮座する。夕闇を迎える頃、紅提灯に明かりが灯り、乗り合わせた子供たちの祭囃子が威勢よく聞こえ始めた。京都の祇園祭に似ている。そうか、どうせ行くならこの時期なのだ。お誘いの意味がやっと分かった。
帰路の待合室で沿線にある宿場町のポスターを見つけた。広重五十三次にある関宿だった。こうした途中下車もまた楽しい。「△△するのがせきのやま」の語源はここが発祥らしい。その昔、この町の山車はひときわ大きく、これを超えるものは無いという意味で広まったとか。
当日は上野天神祭の本祭り(最終日)の日。絢爛豪華な山車(だんじり)が街中を曳き廻される様を見届けたかったが、所用のため止む無く帰りのホームに立った。