(余談)オモロイ安藤さん
その昔、あの建築家の安藤忠雄さんが「都市ゲリラ」と称して小規模な都市住宅を手がけていたが、私は今まさにその気分。安藤さんは、ここから見事に世界に羽ばたいたが、柳の下に二匹目のドジョウは居なかった。
余談だが、この安藤さんがまだ駆け出しの頃、私はアフリカのモロッコで旅の途中に偶然出会い、一週間、寝食を共にしたことがある。実にユニークな人であった。
私が一回カシャッと写真を撮ると、傍で、カシャ、カシャ、カシャと十回くらいシャッターを押す。大きなナイロン袋に百本くらいのフィルムを無造作に入れている。職業はダンプの運転手と聞いていた。確かに容姿もそう言われてみれば・・・
「建物に興味あるんですね」
「まあね。けどオモロイな、この家、窓あらへんで」
帰国後に雑誌を見て安藤さんと分かり、すぐに大阪の事務所を訪ねたが、事務所の廊下で六時間も待たされた。深夜、やっと二人になって、スライドで進行中の作品を見せてもらいながら考えた。
「卒業したら来ていいですか」
「エエよ、けど給料あらへんで」
「そ、そんな」
貧乏学生は躊躇した。これ以上痩せこけた親のスネをかじる訳にもいかない。
「言っとくけど、しんどいから、建築家になったらアカンで」
別れ際のその言葉の真意が分からず、結果、私は中途半端な建築家になってしまった。確かにこの商売、仕事量に比べ報酬が少ない。三度の飯より建築が好きでなければ、建築家を生涯続けるのは難しい。