挨拶を拒否する地主
こうなると一刻も早く、新しい借地人として、地主と折衝をしなければならないことがあった。
第一に、地主に名義変更料を支払い、土地の賃貸借契約を結ぶのだ。通常の借地の売買では、新しい借地人との契約を条件に、旧借地人が売買金額の10%程の金額を地主に支払う。これが名義変更料といわれるものだ。主に代わって承諾するという制度がある。
金融機関の融資の条件にも「地主の承諾」という項目があり、最重要事項だった。
第二に、現在、借地の上に建っている古いアパート併用住宅を建て替えることについても、地主に承諾を得なければならない。これには、建て替え承諾料なるものが発生する。おおよそ、借地価格の5%~10%が相場だ。
第三に、地代額の決定。地代の相場は、固定資産税の3~4倍というところか。この敷地で貸駐車場二台分の額である。
私は、まず電話で地主に面会を申し出た。ところが意外な返答が返ってきた。
「特にお会いすることもありません。全て管理会社に任せていますので、そちらと交渉してください」
これから永い付き合いになるので、丁重にご挨拶をと考え、手土産を用意し身支度を整えていた私はなんとなく腹立たしくなってきた。挨拶くらい受けてもいいだろう。なにが地元の名士だ。
しかし、後で分かったことだが、地主には会いたくても会えない事情があったのだ。