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汝、求めよ、さらば与えられん

「敷地の良し悪しは道路付けによって決まる」
とは、よく聞く話だが、私達の敷地の場合、それは最悪に近かった。もちろん、それは百も承知で購入したわけだが、実際に設計を進めて行くと、この格言の真意を実感した。まず前面道路の道幅が四メートルに満たなかったので、現状の道路の中心線から二メートルのところまで後退して道路と敷地の境界が決まった。後退した部分は道路として提供することになる。

次に道路に接する間口の広さが問題。建築基準法では、最低二メートル接していればよいのだが、現況では三メートルちょっと。これでは車の出入が辛いし、同時に間口が四メートル以上ないと三階建ては建てられない条例があったはずだ。慌てて、再度、区の指導課の担当者に面会を求めた。

「ああ、その条例は二年前から緩和されていて問題ありません」

ことの重要さを察して、役所まで同行した妻が耳元で囁く。
「なんか神様が『建てていいよ』と微笑んでいるみたい。ウレシカー」

ついでに以前の建築確認申請のコピーを閲覧することができた。所轄の役所では、配地図が記された簡単な概要書が必ず保管されていて、誰でも閲覧することができる。ここで更に驚きの事実が判明した。なんと、前回の確認申請図では、道路に面する間口がはっきり四メートルと記されていた。しかも図面は青焼きなのに、そこだけ設計士の手書きで、訂正印まで押してある。何かの意図を感じるが、深く追及しても墓穴を掘るだけかもしれない。そう、ここは大人の判断で見過ごすことにしよう。

現在建っているアパート付きの古家も、条例では特殊建築物としてのアパート申請で、個人住宅とははっきり区別されている。そして、この特殊建築物は、条例改正前のはずだから道路に四メートル以上接していない敷地では許可されない。しかし、実際のところ現況の境界石の間隔を測定すると四メートルに満たないのだ。私はそこにドラマを予感した。松本清張だったらここからミステリーが生まれるかもしれない。

私の推理では、この条例に抵触した前の建て主は、きっと地主に相談を持ちかけ、間口を広げてもらったに違いない。地主もどうせこの辺り一帯が全部自分の敷地なので、多少のことは大目に見たのだろう。ただ、前の建て主は、自分が借りている敷地の中に、車を進入させる必要が無かったため、書類さえ許可になれば、あえて間口を広げる行為に至らなかったのが真相ではなかろうか。

この土地は競売で購入したため、前の建て主と面識が無く、真実を聞くことはできないが、ともかく指導課の担当者の
「間口四メートルとして認定します」
の声は当時の私達には力強いエールに聞こえた。これで車も楽に出入りできるだろう。

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