ここで構造も考えておこう
しかし、ここで直ぐに部屋割りを急ぐようでは修業が足りない。ぐっとこらえて、配置計画図の上に、うっすら見える9ミリの桝目を頼りに、今度は構造計画にとりかかる。ここも少し素人さんと違うところか。一階、二階、三階のそれぞれのゾーニング図を重ね合わせながら、建物全体を上下左右に大きく分割出来る軸線を見つけ出す。
さらに柱の位置がどの階も出来る限り同位置になるように、また耐力壁と言って、下から上まで貫いた壁が多く形成されるように楕円(部屋)の大きさを変えたり、位置をずらしたりする作業を何度も試みる。実は、これが後になって構造設計が楽になる秘訣なのだ。よい間取りとは、しっかりした構造体に合理的に支えられているものをいう。
一階の半分は駐車場と玄関に割り当て、残った半分の敷地にアパートを配置してみた。道路は敷地の西側にあるのでアパートは自然に奥の東側になった。一階はどうしても冬場の日当りが期待できないのだが、幸い東南の隣地の建物が今どき珍しく平屋なので、何とか一階のアパートにも日照が期待できる。
二階は私のオフィスを配置した。この部分はこの自邸の顔となるので、道路に面して、すまし顔を装わなければならない。二階の残りの床面積は、すべてアパートとなった。 こうしてゾーニングを開始してから、ほんの数日の間に、三階を住居エリア、二階に自分のオフィス、一階と二階の半分にアパートを併設した私の自邸の骨格が固まった。
動線としては、一階から三階へ貫く階段が、建物のほぼ中心にあり、三階の住居部分では、階段を上がって右手が個室のつながるプライベートエリア、左手に居間やキッチンがあるパブリックエリアと明確なゾーン分けが見えてきた。
このように、はっきりした意図が具体化された間取りは、完成後もやはり使い勝手がよく、空間的にも美しくまとまる場合が多い。
「やればできるじゃない」
妻は、具体的な間取りよりも、アパートの面積が多いのに満足をした様子だ。