パブリックとプライベートに大別
自邸の設計は、アパートの併設が大きく影響したことは間違いない。その意味では、一般の専用住宅にそのまま応用できないにしても、住宅部分の間取りを考える過程は多少参考になると思われるので少し説明を加えたい。
さしあたり三階にある住居部分のゾーニングは、次のように考えを進めた。まず、階段を上がりきった位置を境に、東側にパブリックゾーン、西側にプライベートゾーンと分けて配置した。個人住宅にパブリックもクソも無いのだが、チョット格好つけて、私達建築士はこう呼んでいる。
東側に家族みんなで使うパブリックエリアをまとめた理由は単純だった。一日の始まりの朝食の時間、皆が集まる場所に、眩しいほどの陽光が欲しかったからだ。これは、以前住んでいたあのボロ家が一日中薄暗く、朝夕の区別もつかない中、毎日蛍光灯の明かりの下で朝食を取っていた反動からだ。そして、食堂が東南に来れば、おのずとキッチンがそれに続く。
「キッチンは、日光が入り込まない方がいいのよ。物が腐り易いから」
妻の言葉に素直に従い、キッチンは食堂に隣接した位置で、しかも北側に配置した。この辺りの安易な決定は、とても建築士の仕業とは思えないが、弁解が許されるのであれば、本来こんなことは大学の建築学科でも教えないし、家事については主婦に勝るわけが無い。とにかく以前から明るいダイニングは、私達夫婦の一番の優先事項だった。