間取りの後日談
個室の集合体であるプライベートゾーンの核心は、子供室の在り方にあった。この部屋を環境的に優先させるべきか迷った。考えてみれば、一年を通じて大方の昼間の時間、子供達は学校に行っている。日が沈む頃、「ただいま」となるのだから、子供室を優遇して日当たりのよい場所にする必要もなさそうに思えた。しかし、残る主寝室は、むしろ北側の方が落ち着くので、子供室は一応南面に位置するが、西の端に押しやることにした。
竣工後の感想を問われれば、間取り的には一応満足の域にある。あえて誤算をあげるなら、中心を東西に貫く廊下が、子供達にとって格好の徒競走レーンになったことだ。六歳と二歳である。走る、走る、しかも全速力で。
「走っちゃダメッ、下にはアパートがあるでしょ!」
母親(ケイコ)の罵声は、竣工以来、聞かない日はなかったが、とうとう根負けした彼女は考えた。
「そうだ、廊下にカーペットを敷き詰めたらいい。私、天才かも」
翌日、インテリア職人の岩井さんが来て寸法を測っていった。やがて、我が家の廊下には、分厚い、とにかく分厚いウールカーペットが敷かれることになった。さらにその下にフェルトと呼ばれるクッション材も追加されたので、ちょうど我が家の廊下は、雲の上を歩いている感覚に似ている。