木造でコンクリート住宅の迫力に迫るには
間取りを考えながら、構造をどうするか迷った。
「木造はなんとなく頼りないような」
ご主人の思いを奥さんから聞いていたからだった。木造がダメならRC造となるが、二階建てなのに、基礎から大げさになるコンクリート住宅も考えものだ。「お任せ」と言われると、そう簡単に答えは出せないのがプロの職人なのだ。とうとう私の職人気質も呼び起こされてしまった。
設計を開始する場合、(いつもそうしているのだが)実際に敷地の真ん中にジッと立って、完成した時の建物の有様を頭の中で幾つもイメージしてみる。一時間もすると足が疲れてきて、道端の縁石に「ヨッコイショ」と腰を下ろす頃、光の入り具合や風の道が何となく見えてくる。車の騒音や小鳥のさえずり(昼間はカラスが多い)も確認事項に入っている。そのうち、周囲の建物の窓の位置も頭に入り、視線を開く方向と閉じる方向が自然と見えてくる。
さて、今回の構造をどうするか。敷地の左隣にはコンクリート打ち放し仕上げの医院が建っていた。北側の壁面はかなり黒ずんでいる。反対の右手にはもうすぐ安普請の建売住宅が建つらしい。間に挟まれて、何か凛とした姿に仕上げたいと思った。
「在来工法ではなく、先日のSE構法はどうだろうか」
多少とも大胆な構造で見せ場を造りながら、しっとりとした木造の良さも表現できる。ここだけの話、何より後に控える自邸の試験台にもなるではないか。これこそ一石二鳥。多少の罪悪感に浸りながらも、施主に打診してみることにした。幸い、関根夫妻は
「とにかく任せたのだから」
と訳の分からないまま承諾をしてくれたのだった。それを知った妻の佳子は呆れ顔。
「あなたって、本当に運がいいわよね」