大工と鳶職が総出の基礎工事
「基礎の段階から自分達がいなければ無理ですよ」
講習会に参加した清水棟梁が言い放った。普通、基礎工事は鳶職の仕事と決まっている。基礎が完成してから大工が乗り込んでくるのが常識だ。しかし、SE構法ではコンクリートの基礎の上に直接支持金物を置き、柱を立てていくので、その金物の位置は誤差五ミリ以下の精度が要求されていた。吹きさらしの外部で、しかも土工事が主体の基礎工事で、鳶職達にこの精度を要求するのは確かに無理があった。
梅雨明けの炎天下で行われた基礎工事は、鳶職と大工が入り混じる賑やかな光景となった。清水棟梁は、コンクリートを流す前に、型枠に墨壺と指し金で柱の位置をミリ単位で表示していく。もし万一、これが間違ったら、一巻の終わりである。その他、何かの不具合が生じれば、その責任はすべてSE構法を選択したこの私にある。祈る気持ちでその作業を見守った。その点、現場で多少の修正が可能な在来軸組工法は、ある意味では確かに優れている。広く全国に普及した要因の一つに違いない。七月の太陽は汗だくの作業員達を容赦なく照りつけていた。
出来上がったコンクリートの基礎の上に、柱を直接支える金物を置く。この段階になって、やはり二箇所の狂いが見つかった。コンクリートを打設する時の圧力でアンカーボルトがやや傾いたようだ。対策としては指示金物の穴の位置を再加工することにした。