セルフビルド方式
自邸の建築工事は、もちろん直接職人達に工事を依頼する直営方式を取ることにした。通常の工事のように、どこかの工務店に一括して工事を委託すれば、当然のことながら諸経費がかかる。その分をカットして材料費に充てられる。工務店の主な仕事は職人の手配なのだから、設計事務所が工務店を兼ねればいい。早速、職人選びに取り掛かる。
判断基準は、やはり人柄である。腕が良いのは当たり前。これまで設計士として多くの建築工事に関わってきたので、工事会社の担当者や職人の親方の名刺は、かるく千枚は超えている。
何年ぶりかに懐かしい名刺を整理しながら、一人一人の顔を思い出し、あの頃の出来事を回想してみた。若い頃は、ずいぶん厳しい指示を出したものだ。もちろん名刺を見ても、その顔が浮かんでこない人もいる。
最近、「仕事は人だ」とつくづく思う。ここ数年、依頼される建設プロジェクトで、参加するか否か迷った時は「どんな人が関係しているか」で判断することにしている。特に建築設計を担当する場合、施主と建築士、それに工事会社などの、仕事に参画した全員が様々な問題に対処しながら、ともかく最後に気持ちよく解散できることが最高だ。後味の悪い仕事はお断り。もちろん、バブルの頃に多かった儲け話にも、最近は耳を貸さないことにしている。