音を立てて暴れる構造材
時刻は午後三時を過ぎていた。とにかく無理をして組んだ屋根の部分をすべて解体することとなった。皆の疲労が一気に高まったのは間違いない。解体は手作業では歯が立たない。幅が45センチ、長さ5メートルもある太い斜め梁をワイヤーで吊って、クレーンで引き上げるしかない。クレーンが起動し、緊張感が走る。やがて、無理に組まれていた梁が、メリメリ、ビシッと悲鳴をあげながら柱から抜け落ちた。たかが木材と思われるが、近くにいて万一接触でもしたら数メートルは弾き飛ばされるほどの迫力があった。同じ作業を慎重に繰り返し、屋根の部分をすべて取り外した時は、もう日が暮れかかっていた。これでは上棟式の時間に間に合わない。
そんなこととはつゆ知らず、下界では大きな盆に小ぶりの紅白の餅と、色とりどりの包装紙に包まれた飴や煎餅の駄菓子、そしておそらく中身は5円玉であろう、おひねりまでがうず高く積まれて出番を待っていた。 おそらく妻の故郷、長崎の風習なのだろう。派手な上棟式になりそうな予感。なにせ精霊流しにバクチクを鳴らして騒ぐ祭り好きな人種だ。地元では、きっと今でも上棟ともなれば、あれこれ工夫を凝らして騒いでいるに違いない。
一方、私の故郷に近い名古屋あたりでは、嫁入り道具の箪笥などをトラックに積んで、わざと見せびらかすことで有名だった。さすがに最近では少なくなったと思われるが、似た者同士と苦笑して見過ごすしかない。
妻とその妹たちは、幼い頃の記憶を頼りに、精一杯その真似事をしてみたかったのだと思う。周囲では、既に子供達の甲高い声が聞こえ始めている。
「おいおい、おじさん達は、それどころじゃないんだけど」