内装に木が使えないもどかしさ
私の自邸は木造三階建てのため、準耐火建築物としての規制があり、仕上げ材としては内にも外にも、木が使えないことは前にもお話した。しかし、住まいの中での木の素材が持つ優しさ、柔らかさ、ぬくもり感は、なんとも捨てがたい。
「元来、日本民族の木材に対してもつ愛着の深さと、感受性の鋭さは、他の民族とは比較にならないほど強いものがある」
以前、誰か偉い先生の本で読んだことがある。この日本人特有の感性を防火規制の下に丸めて捨て去るのも惜しい気がする。
これまで幾度となく繰り返してきた、建築指導課の係員とのせめぎ合いから判断するに、
「木は面としては使用できないが、線的にはある程度許される」
らしい。そこで私は、建具や窓枠だけは、内装材としてなるべく木の味わいを出す設計に努めてきた。
一方、最近の流行なのだろう、若い建築家の作品の中で、木の色をすべて消し去り、白一色に統一された住宅をよく見かけるようになってきた。たしかに一見「カッコいい」印象はあるが、長くホテルの設計に携わってきた私には、あまりに無機質な空間は、どうも貧相に見えてしまう。英語では「シンプルイズプアー」とでも訳されようか。この真っ白な空間は、本来、住宅に求めたい「暖かく安らぎに包まれる場」という視点からは、なんとなく距離があるように思える。
「古い奴だとお思いでしょうが、古い奴には、古い奴の・・・」
いつしか、私も鶴田浩二の心意気が分かる歳になってしまった。