工場で加工技術を確認
柏市の練り付け工場の材料倉庫を一巡してみた。巾20センチ、長さ3メートルほどの薄くスライスされた単板が山と積まれている。これを集成材やベニヤ合板に巧みに貼っていく。その中で最初に目にとまったのがメープルと呼ばれるカエデとサクラだった。
塗装され仕上がった状態を見るには、この単板を濡れタオルで拭いてみるとよい。湿ったこの色がクリアラッカーで仕上がった状態にほぼ近い。木肌に着色する場合があるが、どうも嘘っぽくて私は好まない。やはり自然の色合いにはかなわない。
結論として、今回は、やや色の濃いサクラの木肌を選ぶことにした。理由は、主な壁の内装に決定した左官材シッタの色に似ていたことだ。窓枠や建具枠、それに建具自体の色が全て統一され、しかも壁の色に対して主張するより溶け込んだ方がよいと思ったからだ。
出来上がった造作材は、文句なく美しいものだった。材の中身は暴れん坊の木片達を接着して作った集成材だとしても、表面は優等生のサクラ材だ。しかも貼る技術が高く、どこから見ても、手にとって触ってみても、まったく無垢材そのものだった。ここまで来ると偽物の域を越えている。水に濡らしたり、乱暴に踏んづけない限り、狂いの少ない優等生であり続けるだろう。