回路をケチってはいけない
コンセントに関しての注意点として、エアコンは勿論、ドライヤーとかトースターなどの熱を発する器具を使用する場所に限っては、ブレーカーから直接、独立の回路で配線しておかないと後で泣きを見る。これを見逃すと、頻繁に停電してしまい、その度にブレーカーの位置まで、暗闇の中を手探りでたどり着かねばならなくなる。
たとえば、風呂から上がって、ドライヤ―のスイッチを入れた瞬間にヒューズが跳ぶ。
「どうして?」
隣の洗面所で洗濯物の乾燥機が廻っていたりする。バスタオルを腰に巻きながら、暗闇の中を、キッチンの隅にあるブレーカーまで辿り着かねばならない。時々テーブルの角で腰を強打したりして
「エイッ、クソッ、痛テテ」
私はこうした腹立たしい体験を、これまで住んでいた古家で何度か味わっている。回路をケチらないことは、建築家としてではなく、ひとりの生活者として、身を犠牲にして会得したノウハウである。
ところで、こんなにたくさんのコンセントを取り付けて工事費は大丈夫なのか。心配になって、電気工事会社の社長に聞いてみた。相田社長曰く
「コンセントの機器自体は安いものだから、一度に工事が出来るのなら、たいしたことはありませんよ。まあ、先生のお宅でもあるし、ハハハ」
「ただし、後での追加や変更は、たっぷり経費をいただきますよ」
まあ一安心だが、念を押されたように追加や変更は、施主と施工者の双方にとって得なことではないようだ。心得た工事会社に先手を打たれ、後から変更工事として多額の費用を請求される施主も少なくないらしい。大手ハウスメーカーでも、内部の人間に、「実は、変更工事がおいしい収入源」と聞いたことがある。