BGMのあるお洒落な生活が待っていた
二階の私の事務所ではBGMを流すために、アンプからスピーカーまでの配線を壁の中に隠蔽することにした。この工事の途中に職人から
「ご自宅の方は必要ないんですか」
と何気なく聞かれ、お言葉に甘えて、食堂の部分にも同様の配線を追加してもらった。この時気付かせてもらって良かったと思っている。
そもそも、これまでの古家では、食事の時間に音楽を聞くなんて洒落たことは想像することすら出来なかった。なにしろ応接間兼居間兼食堂兼子供部屋だ。雑多な物があふれ、仮にスピーカーのコードなんかが露出していても全く気にもならなかった。
ところがである。新築後の我が家ではどうだろう。窓辺に花が飾られ、食堂には観葉植物以外余計なものは何ひとつない。そして、テーブルの上には布のランチョンマット。食事タイムには必ずBGMが流れる夢のような生活が待っていた。ここでは電線コードの一本も野暮に見える。人間、変われば変わるものだ。