最新鋭の便器を発注
「お尻だって、洗ってほしい」
最近、トイレのコマーシャルを度々見かける。便器もここまで進化したのかと感慨深い。その昔、ホテルの設計を担当して思ったのは、国産の便器のなんとダサイこと。不満を抱えながら、少なくともデラックスルームには、決まって輸入製品を採用してきた。それが、洗浄便座が普及し始めた頃から逆転し始める。ホテルでもこの洗浄便座付きの国産の便器が採用されるようになったからだ。
ホテルで採用する以上、多少なりとも洗練された形が求められる。メーカー側でもその必要性を感じたのだろう。ここ数年でデザインの改良が一気に進んだ。特に背中のタンクが目立たなくなってきたことで、ずいぶんスマートになったと思う。
この進化は数年前から家庭用の便器にも波及し、最近では、タンクの目立たないものがカタログに載り始めている。そして、ついにテレビCMの登場である。値段はまだ高めだが、ホテルの設計を得意とする建築士としては、無視できない。
「ここはひとつ奮発して、最先端の便器を購入しよう」
「いいわよ、ホテルではたくさん入れたんでしょ。TOTOさん、ひとつくらいくれないかしら」
町場の水道屋ならいざ知らず、天下のTOTOからでは無理があろう。ダメもとで代理店にオネダリしてみたら、あっさり掛け率を下げてくれたので、予算内で収まった。
「だから言ったでしょ。これからもママちゃんの言うこと聞いてね」
「承知しました」