「やってみなはれ、やってみな分かりまへんで」
これまで住んでいた古家には、まったく日光が届かなかった。洗濯物も生渇きで、洗ったばかりの下着が異様な臭いを発することが何度もあった。その反動から、私達は、とにかく明るい家にあこがれていた。直射日光に飢えていたわけだ。今回の自邸は三階建てで、その最上階が住居部分になると分かった時、反射的に天窓を取り付けることを思いついた。
天窓の取り付けは、屋根工事の前となる。つまり上棟式の翌週には、現場に品物が届いていなくてはならない。熟練した設計者により制作された特注品の天窓は例外として、かなりの確率で雨漏れの危険が伴う。下手に現場加工するより、市販の既製品が無難と考えた。既製品でも屋根の材料によって使用する水切り板の形状が違うので、相当前から製品を発注しておかないと、現場で急に設置を決めても間に合わない場合が多い。
「トップライトは、北側の屋根につけるのが常識ですよ」
と多くの本に書いてある。理由は、
「直射日光が入ると、部屋の中が紫外線で焼けるし、夏場は暑くてしかたがない」
という訳だ。もっともな話である。しかし、反骨精神でもないのだが、ちょっと冒険をしてみたかった。実際、特に冬場は直射日光が部屋の隅々まで駆け回らないようでは面白くないではないか。
確か、あのサントリーの創業者、鳥井信治郎も言っている。
「やってみなはれ、やらな分かりまへんで」
今回、天窓は南傾斜の屋根にふたつ、北側の屋根にふたつ、計4台奮発することに
した。奮発と書いた理由は、意外とコストが掛かったからだ。製品代の他に電気工事が加算され、取り付費と屋根の板金工事の手間も見込まなければならない。取り付けた場所は、居間と食堂、それにキッチンと廊下の真ん中である。
南傾斜の天窓からは、夏はもちろん、冬場でも室内に光の帯が現れる。どうかすると、床や壁にフリズムの虹模様が現れることもあり、娘の貴子がその都度、二階の私の事務所まで大声で知らせに来る時は目尻が下がる。心配した夏の暑さは、天井が高いことと、大きなバルコニーに面して電動のブラインドをオプションとして取り付けたことで、特に問題はない。こうしてみると、専門家の意見を鵜呑みにするのも時に損をすることがある。かく言う私のメルマガも、かなり自分勝手な内容なので、全部真(ま)に受けると・・・。