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建具業界に物申す

建具は「動く」という意味でも、建築の重要な部分。戸澤さんは建具についても豊富な知識を持っていた。自分の設計で、内装や建具を全てここに依頼することができれば苦労はないが、ゼネコンの都合や予算の関係で、いつもそうする訳にもいかない。

仕方なく、建具表にこと細かく仕様を書きを添えるのだが、これまで、他社から納品されるもので納得できるものはほとんどなかった。決まってこんな時は、工事会社の現場主任に苦言を呈するわけだが、
「先生、どこでもこの程度で十分通用しますよ。どの設計の先生からも一度もクレームをつけられたことはありません」
と開き直られる始末。最初は腹立たしくもあったが、他のどの現場でも同じ解答が続くと、いつしか諦めの境地が芽生えてくる。

「作らせてもこの程度ならば、いっそ既製品でいってみるか」
そう考えて、建具メーカーにカタログを請求したところ、毎年、分厚いカタログが何冊も届き、置き場に困ることになってしまった。そして、巧みな写真とキャッチフレーズに惑わされて、時々採用してみるものの、やっぱり後悔の連続であった。

では何がそんなに違うのだろうか。あえて分析を試みると、まず表面材の陳腐さと頑丈さに欠ける。どれも建て付けた後に揺すってみると、ボヨヨンと気持ちの悪いブレを感じて実に情けない造りだ。骨になっている芯材の量が少ないか、ドアの厚みが薄いことにも関係しているのだろうが、大量生産によるコストダウン一辺倒主義が、諸悪の根源と思われる。

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