障子の効能を確信する
数年経っての感想は「良かった」の一言に尽きる。まず障子の断熱効果はペアガラスの比ではない。夏にこの障子を開けると、サッシとの間のわずかの隙間に溜まった空気は火傷しそうなほど熱い。反面、冬には冷たい空気をここに閉じ込めて結露防止に役立っていることが分かった。それでいて一年中柔らかな光を透過している。伝統的な和紙の威力に頭が下がる思いだった。
「障子の値段は何で決るの?」
建具屋の加藤さんに聞いてみた。するとどうやら組子の骨の材料のようだ。もちろん同じ技量の職人で、同じ大きさの物を作るという条件だが。
「今回の材料は何でいきますかね」
その都度、建具屋の加藤社長から必ず聞かれる質問である。予算がある時は杉、無い時はスプルスと答えることにしているが、当然のことながら我が家はスプルスである。年数が経てば、はっきり差が出るようだが、無い袖は振れない。
障子一本あたりの価格は、カーテンよりは少し高価だが、その技術力と手間のかけ方を比較すると割安感がある。障子紙も改良されて、かなり丈夫になっている。しかし近年、和室の減少と比例して、障子や襖の需要が少なくなり、建具屋や表具屋の数も激減していると聞いている。
確かに、最近の新築されたどの家を見ても、規格品の建具ばかりで、現場に合わせて造作された職人技の建具には、私の設計した家を除いてしばらくお目に掛かったことがない。マンションに至っては、その建設過程から、一度に大量に納品しなければならない宿命にあり、規格品以外は考えられないのだそうだ。しかし、イタリアあたりの優れた規格品を知っている私には、国内の工場完成品が必ずしも全力投球の成果品とは思えないのだが。