バババーンと大きい壁面収納
住宅などの小さな建物では、天井高が3メートルを超えてくると、空気感とも形容できる、ある意味の迫力と感動を覚えることがある。非日常の空間として意識されるのだろう。我が家のダイニングルームも例外ではなかった。しかも、真ん中に大きな天窓を取り付けたことで、曇った日でもテーブルの上は常に明く、見上げると空が動いている。なんともドラマチックな空間に、我ながら酔いしれることになった。
その高い天井から、最近特に気に入っているフリスビーという名のペンダント式照明器具を吊り下げることにした。ヤマギワで扱っているイタリアの巨匠カステリオーニの作品だが、これはその形のユニークさに加え、電球の光源が直接目に入らない機能的にも優れた器具なのである。
家族の皆が集まる場所ということで、思い切って食事スペースの東側の壁全体を収納とした。皆が共通に必要とする救急用品など雑多な日用品を一同に集めて収容しておく場所があれば、きっと周囲に散乱しないだろうと考えた妻からの要望だった。
「ここからここまで、壁いっぱいに、こう、バーンと天井まであるといいよね」
なのだそうだ。
これが後になってジワジワと効果を発揮してくるから、またまた妻を調子に乗らせてしまう。このあたりの工夫は建築家の範囲を超えている。素人ゆえの発案というか主婦の知恵というか、決して建築学からは会得できない設計術なのである。
しかし、せっかく確保した8帖間の広さが削られるのは忍びない。
「奥行きは、ほんの少しでいいのよ」
との言葉でひらめいた。木造の柱の厚みを利用したらどうだろうか。それだけで15センチほどの奥行きが既にある。大工に頼んで外壁を柱一本分外に追い出して、雑誌が楽に入るスペースが確保できた。手間はかかるが部屋の広さは変わらない。