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探し求めた大理石で玄関を飾る

これまでのホテルづくりの経験から、玄関の床には大理石を敷きたい衝動に駆られた。ちょうど本業の設計の仕事で建材の御影石を探しに行く機会に恵まれ、妻を誘って岐阜県の関ケ原に向かった。あいにく晩秋で、彼女の大好物のアユは食べられない。それでも今回は施主も兼ねているわけで、資材探しに参加させてやることも夫婦円満の秘訣と考えた次第である。

一旦仕事の打ち合わせを終えてから、石屋(と言っても日本最大規模)に無理を言って、いわゆる半端物や切れ端が捨ててある処分場で自邸に使う素材を探してみた。もちろん予算の節約のためだった。

しかし、「残り物に福がある」とはこのこと。暗くなって辺りが暗闇に包まれる頃、やっと好みの石種を探し当てた。自然の模様が実にいい。正直、設計士を続けていて、この瞬間が最も興奮し胸が高鳴りする。
「3度の飯より設計が好き」
と豪語する設計士仲間もいるが、私の場合、この世から娘と鮨が無くなったら死んでもいいと思うのだから、彼らには遠く及ばないとしても、イメージに合った建築材料を探し当てた時は、この上なく幸福感に包まれる。つくづく天職だと実感している。

やがて加工を終えて現場に到着した大理石を見て、再び感動が蘇る。

「半端物なのでドリルやノミの跡が残ってしまいました」
親切な石屋の注意書きを横目に、構わず床と壁に貼ってみた。多少のキズがあっても、いい素材はそれだけで本物の存在感がある。最近やっとこの境地に至ることが出来た。若い頃、自然の産物なのに、ほんのチョットの色違を許せず、ゼネコン相手に平気で取り替え指示を出していた私、今は心から詫びたい心境だ。

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