植物に囲まれて暮らしたい
我が家には、この一年間で観葉植物が異常に増えた。ホームセンターの島忠で、入荷日を調べて一番乗りをすると、個性的な植物に出合えることが分かった。それが失礼ながら、一般の花屋さんの半分くらいの価格で入手できると分かって、妻のケイコさんの目が燃えた。
ホームセンターの入荷は、五月の連休あたりから種類も量もグンと増えてくる。ここでは配達サービスが無いので自家用車でせっせと通い、例の空中庭園には、所狭しと珍しい植物が並んだ。夕食時、スポットライトに照らし出された葉形の数々は、初夏の風に揺れて息を飲むほどに美しい。我が家は、瞬く間にリゾートホテルへと変身を遂げていた。
と、ここまでは良かったが、真夏に強烈な日差しと紫外線で半分やられて、秋口には惨めな残骸が残った。何とか持ちこたえた残りの半分も、その冬の霜に打たれて全滅の運命をたどる。植物も生物だった。適した環境でしか生きられないはずだ。知らないとはいえ、申し訳ないことをしたと心から反省したケイコさん。懲りるどころか、翌年にはその教訓を生かして、場所を変えて雪辱戦に燃えた。
「植木鉢なので成長は遅くなるが、世話をすれば何年も生きるわよ」
家づくりでは少し先輩の、あの関根さんの奥さんから、いろいろアドバイスを受けていた。
「観葉植物は、水やりが命よ」
場所は陽光たっぷりの窓際に移動した。しかも、風が入る場所が最適という。一週間に数回、大目に水を与え、それが下の水抜き穴から抜け落ちるのが理想らしい。そのための様々な装置が加わっていった。
「いいでしょ、今まで洋服もバックも買ってもらっていないんだから」
帰す言葉が見つからない。
中でも、アガペという植物はおもしろかった。サボテンのような多肉植物で、もともと大きなサイズだったが、我が家に来てからもどんどん成長し、一年も経過した頃、ある日突然、花弁が天井に向かってグングン伸びて花が咲いた。驚きもつかの間、やがて一夜にして枯れ始め、ついには本体も朽ちてしまった。
最近のケイコさんのお気に入りは、リュウビンタイというシダ系の植物だ。根、または根に近い茎の部分が溶岩のような塊で、そこから次々にゼンマイのような芽が出て、枝が四方に広がる。会社の応接室を含め、家中のそれを数えると、五株はある。これらが、水やりのために一時的に姿を消すと、何か消失感を感じて殺風景な景色となるから、やはり生き物の存在感は特別だ。
「この根の部分が乾くとダメなのよ。今日も水やり、水やり」
まあ、韓流にハマるよりはマシ。ともかく、近い将来、我が家はリゾートホテルを超えて、きっと植物園になるだろうと推測される